えー、バトミントンを通して皆が頑張る話っす。
予めお知らせいたします。ふれ込みとしては少林サッカーのバドミントン版となていますが、期待して見に行った人にはごめんなさい的な映画です。まっとうなスポーツ映画です。愛情、友情、そして努力する事は決して無駄ではないというメッセージをストレートに表している作品です。
決定的に違うのは試合のシーン。少林サッカーが「あり得へんって!」と突っ込む技が繰り出されていたのに対し、この映画は林(ラム)大師がふざけている以外は普通の試合。あり得へん技を期待していた人にはかなり物足りなかったのでは?例えば、シャトルがドリルのようにギュルンギュルン回って相手のラケットに突き刺さるとか、二人が交差してどちらが打つのかわからないように見せかけて三人目が打ってきたとか。いやいや、三人目どっから?ダブルスに出てきたらあかんやろ?みたいに皆が突っ込むと、実は一人がお面を後頭部に着けていて背面打ちしたとかね。そういうばかばかしい、使えないけれどこんな試合があったらおもろいだろうな的な部分があれば、何人(なんぴと)であっても笑えるし突っ込めたと思うんだよね。そしてもう一つ。勧善懲悪な結末でなかった事。少林サッカーはこれでもかとさげすまされた後、超人的能力者が現れてチームを救い、鼻もちならないライバルに勝利します。が、この映画は勝ちません。それまでの努力をお互いに讃えあい、喜び合う終わり方をしています。負けた方は虚しさだけを味わいます。私は見終わった後、こういうラストを持ってくる映画が香港にも出来たんだとちょっと感動しました。熾烈な競争社会というイメージの香港だけれど、若い人は争いや競争を求めていないんだなと。成熟した社会に変化してきているのかしらと。もう少し踏み込んで言うなら、大陸の人にも早く成熟して欲しいと思いました。同じ努力をするなら、相手を競り落とすのではなく、どうやってお互いを理解し、思いやっていくかに力を注いでいこうよと。そこまで考えさせるなんて、案外深い映画だったんだな。(いや、お前だけだしそんなこと思っているの)

それにしても、何でイー主演ってなっているんだろう。(笑)ぶっちゃけ、主人公はジョシー・ホーです。彼女がのっぴきならぬ状況になってバドミントンを再開し、自信を取り戻し、仲間と目標に突き進む喜びを知っていく映画です。したコメで見終わって一番に思ったのは、「なんで香港マスコミはイーを取り上げたんだ?」でしたね。明らかにジョシー主演だし、お笑い部分のほとんどを林大師とロナルド・チェンが持って行っちゃったのに、なぜにイーがあちこち雑誌やメディアに引っ張りだこになったのかが分からない。(笑)いやいや、出ていましたよ、確かに。危なっかしいアカペラをジョシーに歌って聞かせたり、「バトミントンが好きだから、やりたいから戻ってきたんだろ?」といいセリフも言っていましたよ。でも、イーが主演って言うのは何かしっくりこないんだよね。ジョシーとの恋の行方もものすごくぼんやりしてて私としては完全に消化不良。ラストのおまけのような本物のバド選手に相手をしてもらえるシーンではウキウキしちゃっててまるで素ですから。「俺主演です」ってオーラが少な過ぎ。主演と思っていないんじゃないか?(笑)俳優の一人としてはOKなのかもしれない。世間にうとまれ、過去の自分に縛られ、そして突然の告白に動揺する元極悪人という役を演じたという点ではOKかもしんない。んが!私は納得しない。せめて、大会会場に現れたジョシーを迎え入れた後からは、彼女に対する心の変化がほしかったわ。試合が始まって不安になるジョシーに、はじめて出会った時の「俺を信じろ」よりももっと明確に「俺がいるから大丈夫」と感じさせるくらいの思いが出ててもよかったんじゃない?あまりにも爽やか過ぎて奥さまには物足りなさ過ぎてよ。どうもこのあたりの演出が未熟なんだよね、香港映画監督。お若い監督ゆえに経験不足なのかしら?うふふ。うふふやないて、いや、経験とかの問題じゃなくて、やっぱりここでジョシーに対してどう思っているのか解決してほしかったわ。イーもおそらくそのあたりは確認したんだろうと思うけれど、監督が指示しなければ「ま、いっか?」ってなっちゃう子だからな・・・。(なっちゃう子って、もう48ですけど!お子ちゃまちゃうから。)指示がなくとも「監督これくらいの表現にしましょうよ」くらいの意見はなかったか?はぁ~情けない。

そんな頼りない(いや、お前がそう見ているだけだから)イー主演なのに香港で大ヒットした理由はズバリ!酔っ払い師匠を演じたアンドリュー・ラム氏=林大師によるものではないでしょうか。香港人にこの映画を観た感想を聞いたら、「林大師が出てきただけで笑える」と言っていました。想像するに、日本で言うところのドリフターズ、吉本新喜劇、藤山寛美などなど、出てきただけで笑える、拍手や歓声が起きる、そういう人らしい。30代の香港人が子供の頃テレビや映画で見て笑ったというから、当然その親世代にもウケるわけです。それプラス、「ゲ○」。これが最強のギャグらしい。香港ちびっこには絶対ウケるのだそう。正直、私は笑えませんでした。苦笑です。この映画ではとてつもなく長かったので、「長いよ!」と突っ込まなければ見ていられなかった。(笑)これ、不思議なことに物が見えていなければ笑えるんです。「銀魂」でそのシーンにキラキラ処理をしただけなのに爆笑でした。「ああ、物が見えないと笑えるんだ。」と不思議に思いましたね。どなたか解説して頂きたいこの心理。DVD出す時に日本版ではキラキラ処理してはどうでしょう?その方が笑えるんじゃないかな。とまあ、そういうわけで、香港でのヒットはこの人がいなければなかったのではないでしょうか。つまりは真の主人公は林大師ってことですね。

下コメの舞台挨拶の話を少し。ジョシーはとてもおとなしくて引っ込み思案な感じでした。まあ、約2名が出過ぎていたって事もありますが。(笑)その出過ぎていた人がスーザン・ショウと林大師。スーザンさんはとても気遣いのある人で、若い(っても39歳)ウィルフレッド・ラウに質問が行かないと「誰かいない?」と声をかけたり。その横でふざけていたのが林大師。マイクを金属探知器に見立てて人の体を探知したりととにかくじっとしていない。一般客の質問にももっともらしい顔をしながらおふざけコメント。ウィルフレッド君は礼儀正しい好青年、中年?いや、好青年でしたよ。撮影時は冬で皆厚着だったのに、自分は役柄のためにタンクトップでとても寒かったと言っていました。監督はこれまた30代で若い。林大師とスーザンさんを本当に尊敬している感じがしましたね。現場の雰囲気がいかに良かったがよくわかる全力スマッシュチームでした。しかし、イーはいない。私からの質問を避けたかったか?まあ、そういうことにしておいてやろう。(何様?)

この映画は甘々の作品ではありますが、大先輩達を起用し、それを中年たちがしっかり受け止め、若い監督がまとめてあげたハートフルな作品だと思います。なので、やっぱり、バドミントン版少林サッカーを期待していた皆様、ごめんなさい。<(_ _)>

text by masaka