その7回目
「中華英雄」(レジェンド・オブ・ヒーロー)
99年7月17日~香港上映
2001年2月17日~3月9日(新宿シネマミラノ)
~HORA奥様劇場~
「奥さん、とうとうここまで来ましたね。」
「ええ。」 わけありな女とロン毛の男。二人が見上げている先には自由の女神像。 その下に輝く「ホテルニューヨーク」のネオン。
「思えば長い道のりだったわ。連載6回目にしてついに・・・ついにこの日が・・・ ううっ(ちーん)」(女手鼻をかむ)
「それはやめてくださいよ、みっともない。」
「あら、あなたのカチューシャ姿やセーターをGパンの中に入れるのはみっともなくないの?」
「なんか話すり替えてません?」
「まだ有るわよ・・・」
「奥さん、もういいですって!わかりましたよ。そんな事より、奥さん。本当に後悔 してないんですね。」
「ここまで来てなに言ってるのよ。あなたこそ大丈夫なの?顔色悪いわよ?」
「・・・実を言うと奥さん、僕、こういうところ初めてなんです。」
「あらやだ、私だってそうよ。」
「ああ、良かった。少し気が楽になりました。じゃ、入りましょうか。あれ?ここで いいのかな?」 男、緑のビニールシートがはためく前に立つ。
「さ、服を脱いで。」
「って、奥さん!!道の真中でズボン下げないで下さいよ!なんでここで脱ぐんです? !」
「だってビニールのカーテン、なんかカーウォッシャーみたいだもん。ここで脱いで 通ったらシャワー完了かなって。」(首をかしげてみせる女)
「かなって、何とぼけてんですか。そんなわけないでしょ。あ、なんだここは車用の入り口じゃないですか。入り口はあっちだ。」
「まあ、何かしら狭くて暗くていかにもって感じでいかがわし~。こんなところ人に 見られたら恥ずかしいわ~!」
「だったら踊らないで下さいよ!」
「いけない?ドジョウすくい。」
「そう言うことじゃなくて、目立つでしょ!」
「あら、鼻につけた5円玉が?」
「違いますって!もう、奥さん入りますよ!」 男、女の腕をつかんでホテルの中へ。
「あれ?フロントって無いのかな?」
「先に部屋を選ぶのよ。」
「部屋って?」 男、前を見ると壁に部屋の写真が並んでいる。
「気に入った部屋の写真の下にあるボタンを押すの。ランプが消えているのは使用中。」
「へぇ~って、奥さん!初めてなんじゃあ・・・」
「きぃいい!!(いきなり豹変する女)お気に入り『ペガサスの間』が使われてるじゃ ない!」
「(圧倒されながら)ペガサス?」
「ペガサスが部屋の真中にあってボタン押すと翼が動いて回るのよ。二人を夢の国へ と運んでくれるの~。でも使われてんじゃん!!あー、ムカつく!発散したいわ!!よっ しゃ~!今日は『ビバの間』よ。
「今日はって奥さん、初めてって・・・」
「グダグダ言ってないでこれ持つ!」 女、いつのまにかリオのカーニバル衣装。男にタンバリンを渡す。
「さあ、ビバでフィーバーよ~!はい!♪タンタンタン♪タンバリン鳴らして~!」
「ひぇ~、タンバリン苦手なんです~。」
おまっとさんでした!「中華英雄」でございます。本当に昨年末からどどどっとイー 君 の映画公開が続いてて、なにやら映画の部屋が追いついてない感じ。始めた時はビデ オや未公開映画の紹介と思っていたのに、こんなことになろうとは。勿論、嬉しいこ とじゃあ~りませんか。\(^o^)/
さ、「中華」のご紹介といきましょう。お話は華英雄(イー君)の生涯を彼を探す息子剣雄(ニコラス・ツェ)を通 して描いていくものでございます。とは言っても、イー君が 力説するような文芸映画ではございません。「文芸風」あるいは「文芸もどき」とで も言いましょうか。というより「なんちゃって文芸映画」でございますね。(笑)いえい え、 前半は私感心しましたよ、「確かにこれは文芸作品の域だ」と。それが「なんちゃっ て~」となってしまうのが金太保(マーク・チェン)率いる学ラン5人組登場からです よ。これがあなた聞いて大笑い。日本の忍者なんだって。ちょっと本家本元ニンちゃ んことメンジーさん、「なめんじゃないわよ!」とか何とか言ってやって?(笑)
前半はいいのよ、本当に。18歳の英雄演じるイー君はお家に入る時ピョンピョン跳ね ちゃってちょい痛いけど(笑)赤い剣を貰って目をクリクリさせるところはかわいく て私けっこうお気に入り。跳ねちゃってるって言えばさ、この時の英雄ヘアー別名 「外はね」「カニ道楽」。不評だったよね。いや、英雄はそうでもないんだよ。イー君 終わった後もずーっとこのヘアースタイルだったでしょ?何でそこまで跳ねる?なんで そのあたりから跳ねる?前から見ると広がってるけど、横から見るとペッタンコって なね、髪型が気に入らなかったのよ。なのに外ハネ生写が多い私。以外にやられてた のかも。(爆)話が逸れたわ。どこまで行ったっけ?そうそう、追われる身となってア メリカに渡ったのよね。剣雄が渡米した時と英雄のその時とでは大きく違っていて年月の長さをあらわしています。英雄の船旅は奴隷船でしたからその扱いのひどいことと言ったら。いいとこの坊ちゃん育ちですから、ひもじいけど残飯で食いつないでる んです。だからといって虫食うこたないだろう。気持ち悪いのはわかるが、飲み込むなって。「スーパージョッキー」で白いギター貰いたいのか、英雄?飲み込んだら腹 ん 中で増殖するんではないかと気が気ではない私。そんなこと考えて見てる奴は私くらいか。はははは。
アメリカに着いてからも英雄の前には困難だらけ。たった一つの救いは別れて来た潔瑜(クリスティー・ヨン)からの手紙。「子供が出来たの」という一文にまだ自分の運命を知らない英雄は心から喜び、彼らとの幸せな再会を夢見るのです。あからさま な喜び方をしないイー君の演技に注目です。私のように「初めてでビンゴかよ」など とお下品な事は考えないように。地獄のような労働の中英雄を救ったのは兄弟子の鬼僕です。この俳優さんは顔が見えない上に両腕がない役。なのに見事なカンフーを見せ、香港では高く評価されてました。声は小春がやっています。鬼僕ビュンビュン飛 んで、ビュンビュンアメリカ人をやっつけてさらし首の英雄を助けたんですが、背負った英雄が重かったのか、逃げてく時は走ってましたね。(笑)
さ、潔瑜が渡米して再会した英雄ちゃん。お腹の赤ちゃんが動くからと触ってみた り、耳をあててみたり、幸せそう。私も思い出したわ、お腹の中から蹴られた時、自分のお腹がむにゅって盛り上がるの見て「うげー!!エイリアンがいる~!!」って思ったんだよな。しみじみ。いや、しみじみやないやろ。うげって何やの。でも、このうげ、違う、この幸せはそう長くなかったのよね。例の怪しい学ラン5人組に襲われた後から、二人の幸せには暗い雲が立ち込めてしまうの。この学ラン5人組の紅一点、つまり「くのいち」スー・チーは違う意味で怪しい。手作り木製手裏剣が?葬式かい な黒の留袖が?いえいえ、英雄と鬼僕を追い詰めて見せる「せくすぅい~」なクネクネ腰振り攻撃っすよ。あたしゃ申し訳無いけど笑ったわ。なんかね、黒いロブスターが腰振ってるの連想しちゃった。でも、チューシーンはバッチリよ。思ってたより積極的な英雄に壁際まで追い詰められるスー・チーの戸惑ったような、それでいて誘ってほしそうな表情がなんとも言えましぇ~ん。上手い!って思ってしまうのよ。本当にこの人って本来の性格云々関係無く、女優だよなーって思わせる人よ。さあ、その 女優相手に英雄ことイー君は迫ってくんですが、これがまた超イイ男。イー君さ、 「イイ男」演じるときは「悪い男」と思って演じたほうがいいね。あなたがイイ男と思って演じてるプレイボーイな「FEEL100%」のジェリーは変だもん。あの、ゴルフクラ ブ 持って女選ぶくだりね。(笑)もう、このちょっと悪い子入ってる英雄がチューの合間 に見せる流し目には腰砕けちゃう。でも、その後どんでん返しが・・・。これ以上は言うまい。ほほほ。
またこの後が大変。嫉妬に狂った金太保が起こした火事が元で潔瑜を亡くした英雄。 これはね、本当に泣けるシーンよ。嘘泣きジェリー・ラムの横でわんわん泣いてる イー君と共によだれも鼻水も流しましょうってなもんですよ。本当にイー君の映画に アクションとイチャイチャ、鼻水泣きのシーンは欠かせないものになったわね。そし て自分の運命を知った英雄は姿を消し、代わりにニコちゃん中心のシーンが入りま す。重労働にあえぐ同胞を救おうとするユン・ピュウ達と対立するならず者アメリカ 人とKKK。すごいですよね、KKKですよ。今ここで言うのも怖いわ、私。字幕ではKKK となってましたが、広東語では「さんK」と言ってて、それじゃ、「きつい」「汚い」「危険」だよと突っ込んでた私。これはアメリカ上映ではCUTですかね。あんたかなり問 題になるようなのを何も隠さないでやっちゃうんだもんね。ラウ監督ってけっこう 肝っ玉 。原作はそうでも、そこまで入れなくてよかったんじゃないかな。ほんでもって、この対決にニコちゃんも荷担してるんだけど、彼が危うくなりそうになって英雄 登場。妹をさらった男に彼女の消息を問い詰めるニコちゃんが逆に殺されそうになっ たのを助けたはいいが、その生き証人を粉々にするこたぁないだろう。「手がかり無 くなったじゃんかよぉ、おやじィ~!!」と剣雄は怒り狂う事もなく、ホテルの屋上で涙のごた~いめ~ん。いらっしゃい。(by三枝師匠)白髪ではあってもまだ30代の英雄 がヒラリと身をかわした後ろから「あで~」と呼びかけるニコちゃん。「って、こいつ のほうがガキなんだよなぁ。休憩時間にレーシングカーで遊んでんだぜぇ。」と言い たいところをぐっと飲み込み、あふれる涙で父を見上げ「運命なんて信じなきゃいい じゃないか!!!」と叫ぶ剣雄。この熱演!!日頃の俺様を全く見せないこの演技! くぅ~。イー君も負けておりません。口元が美しかった母に似ている息子を抱きしめ たい思いに駆られながら、「母の写真だ。おまえにやろう。」とだけ言って飛んでっ て しまう英雄。本当に飛んでいきやがんの。飛んでくまでは良かったのよ。ニコに全然 負けてないしね、情感たっぷりなのよ。なのに、ピンピンって小さくなってくの見て るとノミかと思っちゃうよ。香港では爆笑続きだったから途中でCUTになったって噂 だよ?(笑)コンサート前だったら皆笑ってたよきっと。でも、その後じゃどんなにノミみたい、と思っても「かっこいい・・・」とため息ついてしまう日本の婦女子たち。 恐るべし、腰振りイーキンマジック。
うぉおおお、何だかんだ言ってラストシーンじゃんか。いろーんな事があった英雄は宿敵、妙ちきりんなチョンマゲ姿から修行してカッコよくなった無敵(フランシス・ ン)との対決に臨みます。ブルックリン橋(か?)まで響く声で無敵に呼ばれたら行 かないわけにはいきません。るみさんの心配をよそに、自由の女神像をこれでもかっ てくらい壊しながらの戦いです。ここでもアメリカにケンカ売ってるとしか思えない ラウ監督。CGとは言えガンガンぶった切っていきます。巨大建造物を壊して戦う映画 なんて言ったらゴジラシリーズくらいなもんではないでしょうか。またノミのような 二人が自由の女神の上を飛んだり跳ねたりして大変。この大変な撮りから「中華英雄」 の撮影は始まったんですよね。本当に、昔とは比べものにならないくらい足腰のしっかりしたカンフーのイー君。ジャンユー(英名やめなよ。絶対こっちのほうがかっこいいってフランシスぅ)に負けておりません。しかし、ものすごいテンションのジャ ンユーに対して、必殺技の「中華秘技」をふつーに言ってしまう英雄。いや、悟りきってる英雄にしてみれば力むほどの技ではないんでしょうが、いかんせん無敵のテン ションがケタ違いに凄いから普通に聞こえちゃうのよ。英雄の赤い剣を折って鼻息も荒く、ぬ ぉおお!と自分のも折って気合入りまくった彼の演技に対して、そりゃあま りにもふつー過ぎないかって。ねえ。しかし「愛なき者に勝利はない」と言う英雄の お言葉で無敵は敗れていくのです。合掌。
ああ、いい映画だったわ。(ほんとかよ)ほんとほんと。まあ、気になると言えば役 名の字幕ね。英雄が「ヒーロー」潔瑜が「ジェイド」剣雄が「ソード」金太保は 「デュー ク」って、どうよ。漢字の上にそれだもの「ジェイドって誰?」ってなもんですよ。 日本 人にとって漢字はお馴染みさんなんだから、その上に広東語の読みつけとけばいいの よ。「ユーホン」「ギユ」でいいじゃない、ねえ。あと許せないのは、香港で作った 中華 グッズの中の「英雄ストラップ」?(爆)私頂いた時に「それ、付けられないから」と 言わ れ、なぬ?付けられないストラップ?確かに、ひもが短すぎて英雄のでかい頭が入らな い。(イー君の頭がでかいんじゃないよ?)(分かってるって)「それ、取れるから」な ぬ? 付けても取れる?確かに、頭に刺さったネジを取ってひもを通した後に付けたはいい が、抜け落ちた。(イー君の髪が抜けてんじゃないよ?)(やかましい!)ほんとに ね、作るんならちゃんとしたグッズ作ろうよ。まあ、おかげで「ひでおバラバラ事 件」 なるショートショートの名作が生まれたけどね。(覚えてる人いるのか?)(笑)
最後にお待ちかね、Eショットは金太保が放った炎の中、潔瑜を抱きかかえ逃げ惑う 英雄。「来年は家族4人でクリスマスを迎えよう」「英雄」「いいな」字幕覚えてな いけ ど、ともかくそんなような事を言って頭でコツンと潔瑜に返事を求める英雄。頷く潔 瑜。この頭コツンがね、イー君の顔は見えてない、後頭部だけなんだけどもの凄くい い。私のEショットは本当にちょっとした仕草だったりするんですの。お見逃しなく!
Text by まさか