その14回目
「安娜與武林」~風雲格闘王~
2003年12月24日香港公開
2004年12月4日(土)~22日(水)東京キネカ大森にてレイトロードショー
大阪天六ユウラク座にて近日公開予定(05・1・18現在)
~HORA奥様劇場~
とある部屋。分けありげな女とロン毛の男。
「奥さん。久しぶりに二人っきりになれましたね。」
「ほんと。この日をどんなに待ったことか。」
「さあ奥さん、いらっしゃい。」
女が振り向くと、男ベットの中で両手を広げている。
「ええ!!(思わず赤面)」
「さあ。」
男:上掛けをめくる。
「ぬぉおおお~~~スッポンポン!(たじろぐ)」
「さあ。」
男:女に抱きつきタコの吸盤のように口を尖らせ吸い付こうとする。
「ひえぇ~~~!!!やめて!こんなのいつものあなたじゃないわ!
私が好きなあなたは腰が引けててビクビクしてて、
おもちゃやゲームに弱いところなのよ~~~。
でも、せっかくだし、いただいちゃおうかしら?ぐふふ。」
「奥さん、奥さん、起きてくださいよ。」
男:ベットの傍らに立ち寝ている女をゆする。
「奥さん。うわっ、すごい眉間にシワ寄せちゃってる。こわ~。
と思ったら、なんか無気味に笑ってるし。どんな夢見てるんだろう。
起こすのが恐い。でも、日陰の身の僕が奥さんからの少ないお手当てじゃ足りなくて、
気ぐるみショーでバイトして貯めたお金で今日のこの旅行を手配したのに。
奥さんってば一人で寝ちゃって。くすん。もったいないからやっぱり起こそう。」
男:女を起こそうと肩をゆする。
「やめへぇ~~~。」
女:寝言を言いながら腕を振り上げる。バシッ!と男の顔面を直撃。
「ひえぇ~~~(T。T)痛いよう~恐いよ~起こせないよ~。
ああ、今年こそ自分の性格直したい。くすん。」
初日の出に染まり始めた窓を眺めながら一人落ち込む男であった。
いや~、おまっとさんでした!今回は「安娜與武林」でございます。いやいや、手こずりましたね、今回の原稿は。なんといってもイーが苦手とするコメディー映画ですから、私も心臓バクバクもんですよ。だってあなた、香港コメディーって一歩間違えるととんでもなく「痛い」映画になってしまうかもしれないんですもの。香港版DVDではかなり寒かった記憶が・・・。大丈夫かしら?とまあ、母は心配しながら見たんですが意外にもあんま痛くなかった。さすが日本語字幕つき。言葉のやり取りが分かるとある程度納得できはしましたね。ストーリーは、遅すぎた春を迎えた腕っ節の強~いミリアム扮するアンナお姉ちゃんが、恋と格闘技に明け暮れる物語。(明け暮れちゃいねぇか)これって、香港のメディアでこの企画の情報が流れた時は「香港版猟奇的な彼女」だったはず。いつのまにやら「本当に強い女の子の話し」になってんじゃん。(笑)パクったらパクったで文句も出るけど、パクるつもりがぜんぜん違う方向に行ってるってのはどういう事?ちょっと期待していただけにガックリだわ。余談だけど、私は「猟奇」ってなんてエスプリのきいた恋愛映画なんだろうと思いました。「エスプリ」だって、ぶぶっ。自分で書いて笑っちゃった。
冒頭イー扮する広告代理店営業マン、ケンちゃんが仕事中に武侠小説読んでるのを見た瞬間から母はもうハラハラバクバク。「仕事しなさい!」と早くもテンションが高くなる。意味なくドリンク剤を飲む芝居に「あなたのキャリアはどこいったの!」しかもドリンク剤取った時はフタがついていたのに、飲む時はフタはずれてるし。片手でドリンク剤開けよったか?そんな横着な事、母が許しましぇ~~ん!企画会議でも小説読んでるの見たときゃ、「お前の会社はどうなってるの!」それをよしとするスポンサーもスポンサーなら、思いつきで武道大会企画を出すケンちゃんもケンちゃん。「お前ら!真剣に仕事してるのか!」。ここまでの間に母は突っ込みの連発で肩で息してましたよ。突っ込みというか、もう怒りに近いし。(笑)そんなこんなで血管切れそうになる頃、ケンちゃんは日本に。短髪でカジュアルなスタイルは30過ぎてるとは思えない若々しさ。デコッパチさえ見えなければまだまだイケるぞイー。んが、道を聞こうと学ラン男に「スミマセ~ン」と凄いテンションで話しかける恐ろしく下手な日本語には奥さんずっこけた。文字に出来ないのが悔しい。(>_<)「アホの子ちゃうか?」ってなぐらい頭が悪そ~に聞こえるんだな~これが。奥さん笑いすぎて椅子から転げそうになるわ、涙は出るわ、鼻水まで出ちゃいましたよ。(笑)ついでに、門前で地図を引っ張る男に小声で「ヤメテ」って言ってるんですけど、皆さん気付きました?(笑)イーの「ヤメテ」には奥さん口元が緩んでしまいました。(うふ)「スミマセ~ン」と「ヤメテ」はDVD発売されたら要チェック!さて、ケンちゃんに「スミマセン」と話しかけられた男二人はこれから倉田先生ちへと道場破りに向うところ。「おう、俺たちも今から行くところだ!」って、その芝居がすでに倉田先生に負けてるっつーの。
そしてアンナの父親の倉田先生ご登場。「日本人の女と一緒になって少林寺をやめてしまった」と言うからには中国人の役なんでしょうけど、登場の際の日本家屋にすばらしくマッチしたその存在感はどんな角度から見ようとも日本人そのもの。もしかしたら、そんな倉田先生がど下手な広東語を話すからそのギャップがギャグになっているのかしら?弱っちい道場破りをすばらしい殺陣で倒してしまう倉田先生には感動!こんなにバリバリ戦って見せたのに、武道大会には「老眼なんだよ!」ってなギャグを放ってご辞退。無理がある。倉田先生ともあろうものが、そんな理由でいかないわけがない!どうしてもアンナを出場させなければいけないように無理やり持って行ってる感じがする。というか、ここで倉田先生が武道大会に出たらアンナの話しじゃなくなっちまうか。(笑)倉田先生と言えば、Gメン75。当時としては画期的なスタイリッシュな刑事達の中になぜかベタで濃ゆかったのが倉田先生。そして忘れられないのが特番の香港ロケ。今思えばあれが私と香港という街との最初の出会いだったんですね~。そこで必ず出てきたのが筋肉隆々の悪役男。他の人はおしゃれに戦っているのに、倉田先生とこの筋肉男は肉弾戦を繰り広げていたよな~。あの頃は幼心にも「ギトギトした人は苦手」と思いましたが、年齢を重ね、技を重ね、すっかりと落ち着いた今はいい感じ。そんなナイスミドルの倉田先生、道場破りを追っ払って「よし、飯くいに行くぞ!」と言うからには居並ぶお弟子達にも大盤振る舞いかと思いきや、ケンちゃんとアンナの3人のみ。しかも屋台だよ。武道大会に乗り気じゃなかったのに、賞金が出ると聞いて心揺らぐ倉田先生も所詮は人の子ってことね。でも、この屋台シーンで一番気になったのは卵(ゆで卵?)「体冷やすのにいいのよ。」とアンナに渡されてぐりぐり体になすりつけてたケンちゃん。ああ、あの卵になりたい~~~。火照った体を冷やしてあげたいわ~~~ん。でも、私があの卵になったらどっかから鼻血が出ちゃって、「うわ、この卵キモイ!」ってイーに捨てられてたかも。それにしてもあの使い終わった卵はどうしたんでしょうかね。食べたくは無いわよ。いくら無臭のイーでも、カラ割っちゃえばいいとは言っても、人の体につけたもの食べたくないって。いや、本当に。え?よだれが出てる?(じゅる)
さ、父親がダメなら娘とばかりに賞金とハリウッドデビュー&キスの嵐で誘惑のケンちゃん。色気のないチューシーンだし、二人ともとっても可愛いから許す。でも、顔を近づけ、まぶたを押して中途半端な二重まぶた作って見せたイーの芝居には?????。オーバーな表現をしなくちゃいけないからとコメディー演技が苦手と言う割には調子ぶっこいてないか?ぶっこいてるわりには、全然笑えない。(笑)香港版DVDのメイキングでこの「くっきり二重」のイーが映ってるんだけど、こっちの方がメチャメチャおかしい。イーの顔の目だけが劇画タッチになってる感じなの。まぶたの上に目を描いたような感じ。本番でもこれがしたかったのか?にしても、いらいないし。(バッサリ)それにしても、ミリアムがこんなに可愛いとは思わなかった。この映画の中で唯一、キャラクターに無理がなかったのがこの人。キスされただけで「ぽわぽわ~~~ん」と世の中バラ色になる単純さ。結構歳食っているのにハリウッドで女優デビューを夢見る無謀さ。それを一生懸命、めいっぱい表現しているミリアムは演技云々抜かしてこの役に合ってるなーと思ったわ。何が最高って、ハリウッドのスカウトマン相手に「チュウチュウチュウ」ってウルトラマンだかなんだか演じて見せるところね。「ベットの上で」という注文に、飛び乗ったと思ったらまたもや「チュウチュウ」。最高!久々に映画館で笑っちゃったわ。ケンちゃんとの初夜に挑むため、ベット上で座禅組み「身も心も準備OKよ。どんな武器でもかかってらっしゃい!」ってたとえその気のあった男だとしても見たとたんに力抜けちゃうようなお色気ゼロの姿も最高!ついでに「おれ自身が武器だ。」ってケンちゃんの台詞には鼻血出そうになって奥さん鼻押さえちゃったわ。(笑)でも、いくらアンナが単純で可愛いくて一生懸命とは言え、恋人のスーチャウから心変わりする理由としては弱すぎじゃない?気の強い彼女より、守ってあげたいような子に鞍替えか?それって・・・。(・・・って何だよ!)
んで、この恋人スーチャウの父親であり、ケンちゃんの上司役を演じるのは許紹雄。「暗戦」でラウチンの足を引っ張りまくったボケボケ上司で大ブレイク!以後、出演する作品のほとんどでこの「ボケキャラ」使いまくり。こいつさえいなければ!!!と見ている人をイライラさせる存在。今回も未来の娘婿に「お嬢さんと他の女と二股かけてます」って告白されたのに「その気持ちよくわかる!」って味方になっちまうといういきなりのボケ。大事な娘を不幸にしようとしてる男の味方になるか?普通。ところがショッピングから帰ってきたアンナとスーチャウに二股を暴露。なんてこった!大ボケの前振りだったのかよ、オヤジ~。ケンちゃんのために一肌脱ごうとして脱ぎすぎちゃったっつーボケの上塗り状態。こんなにボケ倒してるのに一つも笑えないのはなぜ?ものすごい持って行きようにケンちゃん以上に目が泳いじゃったわ、私。こんなお父ちゃんに説得されてケンちゃんをあきらめてしまうスーチャウもまあ、この親にしてこの子ありってことか?なんにせよ、このアンナとスーチャウとケンちゃんの三角関係で一番損をしたのは弟のサムでしょう。ガールフレンドとイチャイチャしてるところは覗かれちゃうし、お兄ちゃんのわがままに付き合ってあげたにもかかわらず、勘違いされてアンナとスーチャウに張り倒されちゃうし。それにしても、この可愛い弟君に、黙ってればいい男のケンちゃん&テラス付きの素敵なお家の豪華三点セット。ああ、金で買えるものなら買いたいと思いません?月々100円の100万年ローンぐらいで。(なんじゃそりゃ)いつも思うんだけど、イーの映画に出てくる家や部屋の装飾、インテリアってセンスいいよね~。弟君の部屋のインテリアって私好み。引き戸ってところがいいじゃない。階段を下りたリビングはウッドデッキのテラスに続いてて広々。夕焼けもさぞかし綺麗に見えるんでしょうね。そんなリビングにイイ男2人とウルトラマンのフィギア。絵になるわ~。分かりました?日本から帰ったケンちゃんと弟がリビングで会話してる時、その後にウルトラマンが立ってたの。以前「ツインズ・エフェクト」でリーブの部屋のセットに掛かっていた絵はイーが持参したと言うから、もしかしてウルトラマンも自前か?
さあ、物語は武道大会へと突入するわけですが、そんなシーンはどうでもいいです。(こらこら)私が気になったのはツルのようなポーズで戦うフーレイジ役の人。香港映画にはたまに「これ本物?」と思うようなキャラが出てくるじゃない。例えば「男たちの挽歌4」で、入院しているラウチンの隣のベットで「悪党悪党」とわめいていたじっちゃんとか、チンミーにヤクを渡す男とか、スタッフなのかその辺にいた人なのか、でも決して役作りした人とは思えない人物ね、そういうのが登場するんだけど、このフーレイジ役の人もそんな人なのかしらと映画見ている間中思ってました。だって、あのしゃべりかたですよ?ブツブツ頭悪そうに話すし、噛みまくりだし。んが、パンフレットを見たら歌手って書いてあんじゃん!しかも、あのアンソニー・ウォンと「達明一派」組んでる人だというから驚き~~~~。うっそー!!マジ?!いやいや、まてまて、歌ってる時はこんなキャラではないはず。見違えるほど素敵なのかもしれない・・・ああ~~、けど、そんな姿を見ていない私にしてみると、お経のように歌っているのしか想像できない~~。(>_<)ファンの方ごめんなさい。でも、聞いていいですかね?あれは演技ですよね?(笑)ちなみに拙者、ゲスト出演の張達明も達明一派と思っていました。切腹!(>。<)武道大会のシーンで他に気になったのは子役。アンナに嫉妬心を起こさせて闘争心を燃やさせようとスーチャウがケンちゃんと無理やりキスするところ。その後に映ってる子役がさ、舌出してるの見ました?「九龍」で「舌をこうすることが出来るか?」みたいな、舌先を丸めて出して見せるところあるじゃない。ちょっと下ネタニュアンスな。あんな感じに舌を出してやがんだ、後の子役が!(笑)どう見ても芝居してる感じじゃないんだよね。本番中だって言うのに。大画面だもの、嫌でも目に入るじゃない。面白すぎちゃって見ちゃったわよ、私。ああ、悔しい。イーの腰引けてるチューシーンが台無しよ。
最後は私のお勧めEショット。私が選ぶからにはと皆さん色々なイーを想像してることでしょうね。試合中のアンナが妄想するケンちゃんが、両手を広げてお口をタコさんにして「むちゅ~」とばかりに寄ってくるところとか?あれには奥さん引いちゃったわ。奥さん、自分が押す分にはなんともないの。押されるのは勘弁。(誰も押してませんから)やはりイーは引いて何ぼのキャラですから。弟にスーチャウに押し倒されたとバレてしまった時のケンちゃんの情けない顔とかね。そうでなくっちゃと私一人爆笑でした。あそこもよかったな。大会前のパーティーを抜け出した二人がおいしいものを食べに行こうと歩くシーン。照れちゃってるミリアムの手をぐっと引いたりするところがまた、さりげなくていいじゃない。ミリアムがらみでもうひとつ。ミリアムをホテルに送ってきたケンちゃんが帰ろうとするのを彼女が力づくで引っ張り戻した時の「はぁ・・・」って痛そうな声。なんか知らんが奥さん好きなのよ、この声が。ちょっとマニアック過ぎ?(笑)マニアックついでに道場破りの男達と倉田先生の間で、話しかけようと前に出そうで出なさそうな足元。こんなどうでもいいところが好きなのよね~。今回Eショットではないけれど、一番この映画の中でよかったのはミリアムとのデュエット。日本での公開は3年ぶりのCD発売後でしたけど、当時はEEGから冷遇されてた時でCDを出してもらえるような状況ではない中での歌声ですからね。香港版DVDを見た時は本当に久しぶりの歌声で感動した覚えがあります。劇場で見ていてそんな事を思い出しました。ですので、これが私のお勧め。(^.^)ではまた!
Text by まさか