たぶん1999年頃のまさか奥さん渋谷でイーキン遭遇話です。
11月某日 仕事中にMさんから携帯にTELが入った。「渋谷で(イーキンが)撮影してるっ て、Sさんから電話あったの。おいでよ。」かなり興奮している様子の彼女の言葉に私 は動揺した。「え?(香港から)帰って来てるの?」「そうみたい。抜けられそう?」抜けられなくても抜けてみせる!と私は電話を切ると出かける準備にかかる。もし運良く見れるだけでなくサインなんか貰えたりするかもしれない。何かサインして貰うものはないか?私の目にシムピーさん作の卓上カレンダーがとまった。7,8月はランニング姿のイーキン君のイラストだ。それをすばやく抜き取り、サインペンをカバンにしまう。時計が進むのももどかしく、すぐにでも事務所を出たいところを12時10分前まで我慢した私は、「お昼、友達と外で食べて・・・・。」と上司に言い終わらないうちに外へ飛び出していた。身体全体が興奮しているにもかかわらず、心臓がどんどんゆっくりになって行くような不思議な感じがした。いつでもスタートできるランナーのような気分だ。今からだと30分かかる。それまでロケをしているだろうか。心の中で願いつつも「行ったら誰もいなかったりして。」と笑いたい気分。かなり緊張してきた。地下鉄を乗り換える際SさんにTELを入れてみる。「見失った!」とSさん。やはり、そうか。行こうか、どうしようか。いないのに行ってどうする。迷いが生じたが、いや、Mさんがいる。二人で「何してんだろうね、私達。」と笑ってお茶でもして帰ろうとそのまま向かった。
渋谷につくと雨が降っていた。MさんにTELして居場所を確かめると程なくしょんぼり している彼女を見つけた。「もう私が来た時にはいなかったのよ。一応センター街流してみたんだけど、それらしいのはいないのよ。」そうか。さて、どうしよう。Mさん の様子だととてもお茶して、と言う雰囲気ではない。気がすんで諦めないと仕事に戻 れないのだろう。よし、じゃあ、その辺1周して帰ろう。と彼女とbunkamuraのほうに向かって歩き出した。今考えてもセンター街をもう一度見てこようと思わなくて本当によかった。私の中でMさんがセンター街探していなかったのだから、外から回って こようと言う考えがあったのだ。ただでさえ人の多い渋谷で雨。傘を差してとりとめもない事をMさんと話しながら歩く。しばらくして反対側に2台ロケバスらしきものが 停車しているのが見えた。「あんな感じだよね、ロケバスって。」と言いながらも二人の頭に「もしかして・・・」と言う思いが湧いてくる。すると手前の信号に紫のジャンパーを着たスタッフらしき人たち。更に私達とすれ違った渋谷名物ガングロ姉ちゃんが「何か変な集団だよね。」と言った言葉に私の脊髄が反応した!「間違いない!」紫のジャンパーを追って信号を無視して渡る私達。2台のうち後のロケバスの扉が開いていて、そこからベージュのコートに革のカバンが見えたとたん「イーキンだ!!」と、なぜか囁き声で叫ぶ私。「スターどっきり」の寝起きコーナーで、「ここがキムタクの部屋です。」とレポーターがテンションの高い囁き声をするあれを思い出して頂きたい。囁いてるのにでかい声。あの状態。それと同時にMさんを押してコソ泥か忍者のように身をかがめ、ロケバスの見えるビルの影に身を潜める。Mさんは突然押されてわけも分からず、私の後ろに隠れて顔だけ覗かせている。「いるいる。ベージュのコートとカバン。衣装着てるよ、間違いない。」と囁く私。その間もロケバスの開いた扉に目は釘付け。コートが見えるたびにそれを後ろのMさんに伝える。私の肩に置かれたMさんの手が小刻みに震えているのを感じて「いかん、私まで舞い上がってはチャンスを逃してしまう。」と息を深く吸い込む。イーキンはなかなか現れず、その間これはどこかロケに向かうところなのか、それとも休憩時間なのかと私の頭の中は推理作業でフル回転していた。バスの助手席の後ろにケリーが座っている。運転席と助手席以外は目隠しシールが貼られていて中が伺えないのだが、助手席に大量のホカロンが置かれていてそれを取り出すために顔を出したのでわかった。雨が降っているとはいえさして寒い日ではないのだが、香港人にはきついのだろう。ケリーがこらを見たような気がしたが眼中なし!ロケバスと私達のビルの間の歩道を傘をさした 人が行き交い、なかなかバスの出入り口が見えない。ああ、ドラえもんの道具かなん かで透かしてみたい!ともどかしく思う私。と、スタッフの女の子が傘を持ってバス に駆け寄ってきた。中に声をかけている。すると、ベージュのコートが見えバスの口 から背の高いイーキンが降りてきた!「ひゃー!出たー!!(って、お化けじゃないんだから)イーキンだ、イーキーン!!」いぜんでかい囁き声状態。声が前に出ないのよ。マジで。「ひゃー」のところで すぐにイーキンはこちらに気付き、あの目をクリッとさせたままこちらをずっと見て いる。「イーキーン」のところで私達が手を振ると、そのままの顔で胸の前で小さく手を振ってくれた。お得意の手の振り方だ!やられた!天使の放った矢がグッサリと私 達人妻の胸に刺さってしまった。しかし、今思い返してみると、あのイーキンの口元 。何だか笑いをこらえてる風ではなかったか?そりゃそうだろう。黒ずくめの私はビ ルの壁に体を押しつけて手を振り、その後ろから子泣きジジイのように覆い被さった Mさんが顔を出して手を振っていたのだ。かなり怪しい。(爆)「何だ?あの二人は?」と笑いそうになっていたのかも、イーキン。雨が傘をさすほどでないくらいな降りになり、私達の視界を遮る物が無くなった。イーキンは迎えに来たスタッフの傘には入らず、後から降りてきたケリーを促している。マイクを通していない生のイーキン君の声が聞こえるが、広東語の分からない私にはチンプンカンプン。ただ手を差し出してケリーを促している様子から、ケリーに先を譲っているらしいと分かる。さすが、共演女優に優しいイーキンだ。ケリーがスタッフの傘に入って歩き出し、Mさんと目が 合って微笑んでくれたらしいが、私は全く覚えていない。私の目はずーっとイーキン に焦点を絞ったままで、他の物が全く目に入っていなかった。その後イーキンは後か ら降りてきたマイケルと共に歩き出した。歩道を行く人を避けてか私達のほんの目の 前を通り過ぎようとしている。勿論「イーキーン」と声をかけて手を振った。「ハイ」だったと思う。口元を結んで微笑んでくれた。耳掛けヘアーも全く気にならない。せっかく覚えた「伊健」(イギーン、イは短くそこにアクセント)の発音も忘れ、思いっきりカタカナ発音している自分がおかしかった。そのまま通り過ぎて行ってしまうかと思われていたのにマイケルが何か見つけたらしく、二人でウインドーの前で立ち止まり笑って話している。その雰囲気からどうやら ロケで移動しているのではないようだと判断。「何?何がおかしいの?」と口に出して ビルから出る私。それに覆い被さったままのMさん。お前達が一番おかしかろう、と 突っ込まれること間違いなしのコソ泥態勢。二人が見ていたのは酒屋のウィンドー。 話し続けているイーキン達を見てMさんは「いける、いける。」と私をどんどん二人 の方に押す。イーキン達の会話が途切れたのは、私達が「いや、あなたが先に」と奥 しゃん同士ありがちな譲り合いの押し合いへし合いをして近づいて行ったからだろう 。見上げたイーキンの体が完全に後ろに引いていた。ここまで来たら譲り合いもへっ たくれもない。「イーキン、握手して下さい。」と私はしっかりと右手を差し出して いた。オンリー・バリバリ・ジャパニーズであっても、手を出されたら握手以外は考 えられなかったのだろう。イーキンは頷きしっかりと握手をしてくれた。コートのポ ケットに突っ込んでいた手は暖かく、私が想像していたより大きかった。私が想像し ていたイーキンの手と言うのは、身振り手振りで話す時のしなやかな感じ、プラモデ ルなんかを器用に作る繊細な手であった。が、握った手には繊細さなど微塵もなく、 想像していたのが芸術家のような手とすれば、実際のそれは職人のような手といった 感じだった。逞しく、大きく、しっかりと支えてくれそうな。そしてかなり色黒。ど うした?ドラマの撮影やハワイでの日焼けがまだ残っているのか?それとも辛い事続 きで呑んだくれて肝臓でも悪くしたか。冗談、冗談。ともかく手の印象がそれだけ残 っていると言う事は、その時イーキンの顔を見ていないと言う事だ。そう、見るのが 恥かしかった。イーキンより少し年上で、子供までいると言うのに、この時の私はさ ながら卒業して行く憧れの先輩にボタンを貰う女の子のようであった。・・・#-_- #。気持ちだよ、気持ち。見かけは怪しいヤップンヤンさ。(>_<)Mさんとも握手をしたイーキンは歩き出し、後に続こうとするマイケルに初めて気付 いた私は「マイケルだー。」と手を振る。が、マイケル会釈しながらもこちらを凄く 気にしている。「いいの?イーキン行っちゃうよ?いいの?」と言ってるような気がし た。マイケルになら言えるぞ。とばかりに私はマイケルを呼び付け、イーキンのサイ ンが欲しいと言ったが通じない。オンリージャパニーズではいかんのか?何のために 日本語勉強してるんだマイケル。Mさんが広東語で「サイン」と言ってくれてやっと 通じた。マイケルに例の卓上カレンダーとMさんのイーキンの切り抜き、そして私の サインペンを渡すと彼はイーキンの元に走りちゃんと貰って来てくれた。「多謝」と 言えた私。マイケルになら言えるのさ。そう言えば、握手してもらった時私はイーキ ンにお礼を言ったのだろうか。すでに記憶のない私。サインして貰ったばかりのカレ ンダーを見ると、ちゃんと自分のイラストにサインしている。微笑ましい気分。雨に 濡れないうちに鞄に仕舞った。二人が行く後をかなり離れてついて行く私達。やはり 休憩らしく、地下のイタリアンレストランへと入って行く。入る前にもちゃんと振り 向いて手を振ってくれた。二人が地下に消えて行っても、興奮覚めやらないMさんと私は合流したSさんにそれま での事を一部始終話し、イーキン達が出てくるのを待った。2,30分ほど経ったろうか 、Mさんが私の陰に隠れながら電話しまくった中で唯一現地に来れたSeさんが到着し たすぐ後に、イーキン達が出てきた。出てきた途端ソフトストーカー(笑)Sさんを 見つけたイーキンは「来てるよ」と言った顔でマイケルを見る。やっと勇気が出始め たMさんが「どんどん図々しくなる。」と言いながら持ってきたカメラをマイケルに 渡し、写真を撮ってくれるよう言う。「together」と言ったね、イーキン。初めて私 達に向けられた唯一の言葉。「together」忘れないよ。マイケルの日本語で「イチ、 ニイ、サン」の掛け声で写真撮影は終了。仲間が増えた事で少し緊張の解けた私はは っきりとした声で「ありがとう」とイーキンに言った。「ありがとう」はその意味も ちゃんと覚えたんだね。すぐに反応して肩越しに振り向き、しっかりと私の目を見て 頷いてくれました。その後Seさんにサインをしたイーキンは「バイバーイ」と手を振 ってバスに乗り込み、それを待っていたかのようにロケバスは出発して行った。走り 去るバスを見送った後、にわかに嬉しさがこみ上げてきた。「嬉しい!やった!」と口 に出して言う。世の中全てに優しくしたい気分!奇跡が起きた!本当に信じられないような出来事でした。今でも夢のようです。でも私の手には握手した感触が残っているし、最後にイーキンと目を合わせた事もはっきりと覚えていま す。こんなパーフェクトな事はもう二度とないでしょう。パーフェクトすぎて、次に 生麺対面する時が怖い。特に私服時。(爆)私はいつも心のどこかで諦めてました。私には子供もいるし、香港にいつでも行ける状態ではない。香港に行けたとしても必ず会えるわけでもないのに、イーキンと握手するなんて夢のまた夢だろうと。しかし、夢は叶いました。まだイーキンと会っていない皆さん。夢を持ちましょう。いつか必ず会えます。皆さんとこの喜びを分かち合える日が来るよう、心から祈っています。
まさか